近年、あまり「辛抱する」という言葉を聞かなくなった。
「辛抱する」は、祖父が使っていた言葉でもあった。
「辛抱しなさい」と子どもの頃よく言われたものだ。
現代では「辛抱」の代わりに使われる言葉として「我慢する」が挙げられる。
「辛抱」と「我慢」同じじゃないかと思われそうだが、実は随分と意味が違う。
「我慢」は自分が嫌だと思うことに精神的・肉体的に耐えること。
「辛抱」は自分が志したものを実現するための努力に耐えること。
どちらも耐えることだけれど、「我慢」は酷くストレスが溜まりそうな状態だ。
私たちは、長年の学校生活で「我慢する」ことを強いられてきている。やりたくないこと、嫌なことに耐えなければならない、そんな環境で育っているので「我慢」で発生した負のエネルギーは強い。
「我慢」をすると嫌な思いに耐えているので、この嫌な思いを別のところで発散する形になる。
「これだけ我慢したんだから、これをしてもいい」
という思考になりがちなのだ。
負のエネルギーは大変強く、「こんなに大変な思いをしたんだから!」と怒りのエネルギーも連れてくる。
「これをしてもいい」と交換するエネルギーは「これだけ我慢したのだから、貰って当然!」になる。
つまり「奪う」エネルギーと同じである。
言うなれば、ジャイアンだ。
「こんなに嫌なことを我慢したのだから、当然でしょう」
そこには、感謝の気持ちは全くのらない。
「奪って当たり前、貰って当たり前!だってこんなにしんどいんだから!」
このエネルギーと感謝の波動が全く違うのがわかるだろうか。
私は、親にこのエネルギーをたくさんむけてきた。
嫌なことをされた方が多かったし、親にお金を出してもらうことは、この思いだった。
「こんなに殴られたのだから、当然」
「こんなに辛い思いをしたのだから、当たり前」
これがお金をもらうことと結びついてしまい、私はこのエネルギーに長年悩み続けることになる。
夫と結婚しても、無意識に培ってきた思いが消えず、苦労してきた。
結婚してから随分と夫の収入が低かったので、「こんなに大変な思いをしているのに!」と怒りと我慢のエネルギーをぶつけて、夫は疲弊しきっていた。
私は「大変な思いをしなければ!」と無意識に頭の中で思うので、現実はどんどん大変なことばかりやってくる。
「全て私がやらなければ!」となっていくので、現実も願い通りになり、休みもなく忙しいのに給料が低いという悪循環になった上、「できない夫」という思い込みまで出来上がっていく。
我慢をするとその対価で奪う構造になっている仕組みを知らない私は、ひたすらしんどくなる現実に拍車がかかった。
この現実が起こる時、いつも私はイライラしていた。
怒りに苛まれていたのだ。でも、このイライラは、大変なことが嫌だという怒りだと勘違いしていた。
私の中の私は、この不必要な我慢をして奪うルートを通りたくないのだと訴えていたのに、私は気付けなかった。
6人目の出産後、2週間で義理の叔母が亡くなり、夫が家を留守にすることになった。
私は、産後の身体で動けず、しかも風邪をひいて熱を出していた。
この状況で、夫ははるばる遠方のお葬式に参列した。
私は、あまりにも辛すぎて泣いた。どうやってこの身体で6人の育児をしたらいいのか。
私の願いは「ゆっくり休みたい」だった。その願いを必死に叶えるため、私の中の私は、今までのルートを辿る。
「大変な思いをして、ゆっくり休もう」
いやいや、意味がわからない。
潜在意識って、どうなっているのかと思う。細かいやりとりを見ていくと、おかしいと気付けるのだが、産後の私はゆっくり自分と向き合う余裕すらなく、おかしいことに全く気がつけなかった。
これを、もう辞めようと決めたのだ。
本当に遅いが、そう決心した。
ようやく、我慢するメリットがわかったからだ。体調不良で夢を見た時に、夢で教えてもらった。
私は、この我慢を持ち続けることで、願いを叶えていると思っていたし、親に対しての精一杯の意思表示だった。
だが、現実は願いが叶っているどころかマイナスな状況だし、親に対しての意思表示すら今はもう必要がない。
全く私にとって何も有益なことは一つもないまま、潜在意識が自動運転を起こしていた。
一度、通ったルートは何度も通ると地図さえ見なくてもそのまま動けてしまう。
それくらい、ずっと走り慣れた道だった。
もう、私にとっては必要がないので、「大変さ」も「不幸」も「しんどさ」も色々まとめて手放すことにした。
キッパリ、と。
永遠に、だ。
そう決意すると、今まで私が大嫌いな運動を、すごくしんどいから嫌だと思っていたのに、しんどいどころか、楽しんで運動できるというメッセージが流れてきた。
潜在意識が変化すると、それに対するメッセージが素早すぎる。
思い込みが解消した合図だ。
何度も何度も、別のところからメッセージがやってくる。
「人生を不幸だと思って生きても仕方ない。楽しんだ方がいい」
たまたま流れてきたメッセージにも、驚く。
自分にとって、大きなブロックだった。
気づけて、良かった。